みなさんはご自身が使用している歯磨き粉にどのような成分が入っているかご存知でしょうか?
歯磨き粉の成分表に表記されているのを見たことはあっても、その成分にどのような効果があるのか分からないですよね。
そもそも歯磨き粉は、基本成分のみが配合されている「化粧品」、基本成分と薬効成分が配合されている「医薬部外品」の2つに分類されます。
基本成分と薬効成分はそれぞれどのような働きをするのでしょうか?
今回は、歯磨き粉の化粧品と医薬部外品の違いや配合されている成分の役割について詳しくご説明していきます。
歯磨き粉は「化粧品」と「医薬部外品」がある
日本で作られている歯磨き粉は、薬機法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)によって「化粧品」と「医薬部外品」の2つに分類されます。
「化粧品」の歯磨き粉は、歯に付着した汚れを落とす研磨剤や歯磨き粉を泡立たせる発泡剤など、歯磨き粉を成り立たせるための基本成分のみで構成されています。
一方で「医薬部外品」の歯磨き粉は薬用歯磨き粉とも呼ばれており、基本成分に加えて虫歯や歯周病、歯の着色などの口内トラブルに働きかける薬効成分も配合されています。
化粧品に比べて医薬部外品の歯磨き粉の方がさまざまな効果を持ち合わせていることから、現在販売されている歯磨き粉のほとんどは医薬部外品となっています。
また、基本成分と薬効成分はそれぞれ持っている作用が異なるため、次の章からご説明していきます。
6つの基本成分が持つ働き
歯磨き粉を構成している基本成分は化粧品と医薬部外品のどちらにも配合されており、主に以下の6つの類に分かれます。
- 研磨剤(清掃剤)
- 発泡剤
- 粘結剤
- 湿潤剤(保湿剤)
- 香味剤
- 保存剤(防腐剤)
この中にはあまりオススメしない成分もあるので、歯磨き粉を選ぶ際は成分表をしっかりと確認しましょう。
研磨剤(清掃剤)
研磨剤は歯に付着した汚れやステイン(歯の着色汚れ)を研磨して落とす働きをします。
しかし、研磨剤配合の歯磨き粉を使って歯を強く磨くと、汚れだけでなくエナメル質も削れて派の表面に細かい傷が付いてしまう恐れがあります。
また、配合量が少量なら問題ありませんが、多く配合されている場合は強く磨いていなくても研磨剤と歯ブラシの力が合わさって歯が傷付くことがあります。
この傷に細菌やステインが入り込むと虫歯や着色の原因となるため、なるべく研磨剤が含まれていない歯磨き粉を選ぶようにしましょう。
研磨剤は以下のような成分名で記載されています。
- リン酸水素カルシウム
- 炭酸カルシウム
- 水酸化カルシウム
- ピロリン酸カルシウム
- 酸化チタン
- 含水ケイ酸
発泡剤
発泡剤とは歯磨き粉を泡立たせる成分のことで、泡立つことで口内に歯磨き粉を行き渡らせて洗浄を促す働きをします。
しかし、発泡剤が配合されている歯磨き粉もあまりオススメできません。
なぜなら泡立ちが良いとすぐに口内がスッキリしてしまうため、歯磨きを簡単に済ませてしまい口内に汚れや歯垢が残る恐れがあるからです。
磨き残しは虫歯や歯周病、口臭などのさまざまな口内トラブルに繋がるため、なるべく以下の発泡剤を含まない低発泡の歯磨き粉を選びましょう。
- ラウリル硫酸ナトリウム
- ラウロイルサルコシンソーダ
- ラウロイルサルコシンナトリウム
- N-ラウロイル-L-グルタミン酸ナトリウム
- ショ糖脂肪酸エステル
粘結剤
粘結剤は歯磨き粉の原料である粉末成分と液体成分を結合させて、歯磨き粉に適度な粘度を与える働きをします。
粘結剤が配合されていないと粉末と液体が分離してしまい、成分が偏ったりチューブから液体成分が流れたりするため歯磨き粉には必要な成分となります。
以下が粘結剤の主な成分です。
- カルボキシメチルセルロースナトリウム
- アルギン酸ナトリウム
- カラギーナン
湿潤剤(保湿剤)
湿潤剤は歯磨き粉を適度に保湿して凝固や分離を防ぐ働きをします。
以下が湿潤剤の主な成分です。
- ソルビトール
- グリセリン
- プロピレングリコール
香味剤
香味剤は歯磨き粉に香りや味を与える働きをします。
歯磨き後の爽快感は以下のような香味剤によるものです。
- メントール
- サッカリンナトリウム
- ミント類
保存剤(防腐剤)
保存剤は歯磨き粉の変質や劣化を防ぐとても重要な働きをします。以下が主な成分です。
- パラベン
- 安息香酸ナトリウム
薬効成分が持つ働き
薬効成分は医薬部外品の歯磨き粉にのみ配合されています。
虫歯や歯周病、歯の着色、知覚過敏などそれぞれに有効的な成分があるため、用途別でご説明します。
虫歯予防
虫歯予防にはフッ素がオススメです。
虫歯は、歯垢や細菌から出る酸が歯を溶かすことによって引き起こされます。
フッ素には、歯をコーティングして歯垢や細菌の付着を抑制する働きや酸によって歯が溶けるのを阻止する働きがあるため、虫歯予防に優れているのです。
フッ素は以下の成分名で配合されています。
- フッ化ナトリウム
- モノフルオロリン酸ナトリウム
- フッ化第一スズ
歯周病予防
歯周病を発症している方や予防をしたいという方には、抗炎症作用や殺菌作用のある成分が配合された歯磨き粉をオススメします。
歯周病とは、細菌や歯垢が歯周ポケット(歯と歯肉の境目)に入り込み、歯肉が衰えたり歯を支える骨が溶けたりしてしまう炎症性疾患のことを言います。
抗炎症作用のある成分には歯肉の炎症や出血を抑える役割があり、殺菌作用のある成分には菌の働きを抑制する役割があることから、歯周病だけでなく虫歯予防にも優れています。
歯や歯肉の健康を保ちたい方は、以下の成分が配合されている歯磨き粉を選びましょう。
抗炎症作用
- グリチルリチン酸ジカリウム
- トラネキサム酸
- サリチル酸メチル
殺菌作用
- イソプロピルメチルフェノール(IPMP)
- 塩化セチルピリジニウム(CPC)
- 塩酸クロルヘキシジン
ステイン・ヤニなどの着色予防
ステインやヤニなどの歯の着色予防には、ホワイトニング歯磨き粉をオススメします。
ステインやヤニは、飲食物や煙草に含まれる着色成分がペクリル(エナメル質を覆う薄い膜)と結合することで生じます。
一度着色すると除去することが困難ですが、ホワイトニング歯磨き粉と呼ばれる歯磨き粉にはステインやヤニを分解して除去する働きがあるのです。
以下がホワイトニング歯磨き粉に含まれてる主な成分です。
ステインを分解する成分
- ポリリン酸ナトリウム
- ピロリン酸ナトリウム
- メタリン酸ナトリウム
- ポリアスパラギン酸
ヤニを溶解する成分
- ポリエチレングリコール(PEG)
- ポリビニルピロリドン
ホワイトニング歯磨き粉の種類の中には研磨剤が配合されているものもあるので、成分表を確認してなるべく研磨剤が含まれていないものを選ぶようにしましょう。
知覚過敏抑制
冷たいものが歯に触れたり歯磨きをしたりしたときに歯がしみる方は、知覚過敏の症状を抑制する成分が配合された歯磨き粉をオススメします。
知覚過敏とは、歯の内部にある象牙質という部分に刺激が伝わることで歯がしみる現象のことを言います。
以下の成分は、象牙細管(エナメル質から象牙質にかけて通っている無数の細い管)を封鎖する働きがあるため、刺激を象牙質や歯の神経へ伝達しにくくしてくれます。
- 乳酸アルミニウム
- 硝酸カリウム
まとめ
日本で作られている歯磨き粉は、薬機法によって「化粧品」と「医薬部外品」の2つに分けられます。
化粧品の歯磨き粉は基本成分のみで構成されており、医薬部外品の歯磨き粉には基本成分と薬効成分が配合されています。
基本成分は主に以下の6つの類に分かれています。
- 研磨剤
- 発泡剤
- 粘結剤
- 湿潤剤
- 香味剤
- 保存剤
しかし、研磨剤は歯に細かい傷を付けたり発泡剤は磨き残しに繋がったりする恐れがあるため、これらの成分が多く配合されている歯磨き粉はあまりオススメしません。
一方で、薬効成分は虫歯や歯周病、歯の着色や知覚過敏など、それぞれの症状に働きかける成分があるため、口内トラブルの予防や抑制をしたい方にオススメです。