「重曹で歯を磨くと白くなる」という情報を聞いたことはありますか?
重曹と聞くと油汚れや湯垢などのしつこい汚れを落とす掃除用品のイメージがありますよね。
実は、重曹は3種類あり「 掃除用 < 食用 < 薬用 」の順で粒子が細かくなっています。
食用の重曹は口に含んでも大丈夫なことから、水に混ぜて歯磨き粉として使用すると歯が白くなると言われているのです。
今回は、重曹で歯磨きをすると本当に歯が白くなるのかを解説するとともに、危険性や安全に歯を白くする方法をご紹介していきます。
重曹はステインを分解することができる
重曹とは食塩水と二酸化炭素から作られた化学物質のことで、「炭酸水素ナトリウム(重炭酸ソーダ)」とも呼ばれています。
重曹と水を混ぜて歯磨き粉の代わりに使うと歯が白くなると言われていますが、重曹にはホワイトニングのように歯を漂白する効果はありません。
けれども、ステイン(歯の着色汚れ)を分解する働きをします。
重曹の水溶液は弱アルカリ性になっており、アルカリ性はたんぱく質を分解する性質があります。
ステインは飲食物に含まれる着色成分がペクリル(エナメル質を覆う薄い膜)というタンパク質と結合することで発生するため、重曹の働きによって着色成分とペクリルの結合を防いだりステインを分解して落としたりすると言われているのです。
しかし、弱アルカリ性はアルカリ性と比べると分解する力が弱いため、歯の着色が薄くなったと実感する人もいれば効果を実感できない人もいます。
また、重曹を使用した歯磨きにはさまざまな危険性があります。その危険性については次の章で詳しくご説明していきます。
重曹で歯を磨くのは危険
重曹を使った歯磨きはさまざまな口内トラブルを招く恐れがあるためオススメしません。
この章では、重曹を使用した歯磨きによって起こりうる危険性をご説明していきます。
歯に細かい傷が付く
重曹は水に溶けにくい性質があるため、溶けきれなかった粒子と歯ブラシの摩擦力によって歯の表面が剥がれて細かい傷が付いてしまいます。
細かい傷の中に着色成分や細菌が入り込むと自分で除去することが難しいため、ステインや虫歯の発生に繋がってしまうのです。
歯石ができやすくなる
重曹を使うと唾液が分泌され、歯石が発生しやすくなります。
歯石とは歯垢(細菌の塊)が硬くなった物質のことを言います。唾液中に含まれるムチン(粘液)とミネラル(カルシウム・リン酸)という成分が歯垢に沈着することで硬さを増し、歯石へと変化するのです。
私たちの口内は唾液が少ないと弱酸性、唾液が分泌されていると弱アルカリ性へと偏ります。
そのため、弱アルカリ性である重曹を含むと口内がアルカリ性に偏ってしまい唾液の分泌量が増えてしまうのです。
その結果、分泌された唾液が歯垢に沈着し歯石へと変わってしまいます。
歯石は歯周病や口臭が発生する大きな原因でもあるのでとても危険です。
口内や唇が荒れて口内トラブルを起こしやすくなる
重曹は弱アルカリ性ですが、タンパク質だけでなくしつこい油汚れをも分解する性質があるため、重曹を使用した歯磨きやうがいの頻度が多いと口内や唇が刺激されて荒れてしまう恐れがあります。
こうなると口内の免疫力が低下して外部からの細菌やウイルスを受け入れやすくなり、虫歯や歯周病、口内炎などの口内トラブルを起こしやすくなるのです。
安全に歯を白くする方法
上述したようにさまざまなリスクを負いながら重曹で歯磨きをするよりも、安全にステインを除去したり歯を白くしたりする方法がいくつがあるのでご紹介します。
ホワイトニング歯磨き粉
ホワイトニング歯磨き粉とは、着色成分とペクリルの結合を防いだり、歯に沈着したステインやヤニを分解して除去したりする成分が配合された歯磨き粉のことです。
ドラッグストアや通販などで700円~3,000円程の価格で販売されています。
重曹を使用した歯磨き粉と同じで歯を漂白する効果はありませんが、ステインやヤニを除去して歯を本来の色に近づける働きをするため、わざわざ重曹と水を溶かして使用するよりも手間が掛からず安全に使用することが出来ます。
以下がホワイトニング歯磨き粉に配合されている主な成分です。ホワイトニング歯磨き粉を選ぶ際は成分表にこれらが表記されているか確認してみましょう。
エアフロー(ジェットクリーニング)
エアフローは歯科医院でステインやヤニなどの着色を除去する方法で、ジェットクリーニングとも呼ばれています。
施術方法は、炭酸水素ナトリウムが主成分となっている歯面清掃用パウダーと水を歯面に高圧で吹きかけて、ステインやヤニを除去します。
ここで使用されている炭酸水素ナトリウムは、私たちが購入できる重曹とは違って粒子がとても微細なので、歯にダメージを与えることはなく安全です。
エアフローは歯の着色を除去する方法であり、虫歯や歯周病を治す病気治療とは異なるため保険が適用されず自費診療となります。
費用相場は、4,000円~6,000円程度です。
ホワイトニング
ホワイトニングは歯を漂白することに特化しており、本来の歯の色よりも白くする効果があります。
しかし、エアフローと同じく病気治療ではないため保険適用外となります。
ホワイトニングには「オフィスホワイトニング」と「ホームホワイトニング」の2種類があり方法や費用などが異なるため、ご説明していきます。
オフィスホワイトニング
オフィスホワイトニングとは歯科医院で施術してもらうホワイトニングのことで、歯の表面にホワイトニング専用の薬剤を塗布し、その部分を専用の機材で照射して歯の表面を白くするという方法になります。
一度の施術で白さを実感するほどの即効性があるため、歯を白くするまでにあまり時間を掛けたくないという方にオススメです。
しかし効果には個人差があるため、ご自身が納得するまで数回受ける方もいます。
費用相場は、一回の施術につき15,000円~50,000円程度です。
また、オフィスホワイトニングをしたとしても、着色成分が含まれた飲食物を多く摂取したり歯磨きを怠ったりしてしまうと再度着色を起こしてしまうので気を付けましょう。
ホームホワイトニング
ホームホワイトニングとは歯科医院で作成してもらったマウスピースとホワイトニング専用の薬剤を持ち帰り、自分でホワイトニングを行う方法のことです。
使用方法は、マウスピースに薬剤を注入し毎日30分~2時間ほど歯に装着させます。
歯の内部に薬剤を浸透させて歯を白くする方法のため、白さを得るまでに1~3ヶ月程の毎日の継続が必要となりますが、再着色を起こしにくいのでオフィスホワイトニングよりも白さを持続することが出来ます。
費用相場は20,000円~40,000円程ですが、これは初回のマウスピース作成費や薬剤(1回につき約2~4週間分が処方)に掛かる費用であり、薬剤を追加する場合は別途で費用が掛かります。
薬剤のみの費用は、5,000円~8,000円程度です。
まとめ
重曹とは食塩水と二酸化炭素から作られる化学物質のことで、歯磨き粉として使用すると歯が白くなると言われています。
しかし実際のところ、ステインを分解する働きはありますが歯を真っ白に漂白することは出来ません。
アルカリ性はたんぱく質を分解する性質があり、重曹の水溶液は弱アルカリ性であることからこの情報が広がりましたが、弱アルカリ性なので分解する力は弱いです。
また、以下のような危険性があるため重曹を使用した歯磨きはオススメしません。
- 歯に細かい傷ができる
- 歯石ができやすくなる
- 口内や唇が荒れて口内トラブルを起こしやすくなる
ステインの除去や歯を白くしたいという方は、ホワイトニング歯磨き粉やエアフロー、ホワイトニングなどの安全な方法をオススメします。